深夜の再会

　　　　　　　薬を飲んで横になったけど目が覚めちゃった。

　　　　　　　時計は午前３時を指している。
　　　　　　　皮肉だな。こんな時間に目が覚めるなんて

　　　　　　　あれからちょうど一週間。
　　　　　　　偶然だな
　　　　　　　しかも、君がこの世を去った時間にちょうど目が覚めるなんて

　　　　　　　なぜだろう？　急に体の調子が良くなった。
　　　　　　　会いに来てくれたの？　だとしたら惜しいことをした
　　　　　　　もう一度話せるチャンスだったかな？
　　　　　　　起きて待っていればよかったな

　　　　　　　急に体の調子が良くなったのは
　　　　　　　君が残りの命を僕に注いでくれたからなの？
　　　　　　　もっともっと長く生きられるはずだった君の残りの命を

　　　　　　　３６年も生きてきて
　　　　　　　苦さも涙もいっぱい噛みしめてきたから
　　　　　　　気持ちはもう、落ち着き始めてるよ
　　　　　　　たしかにかなりこたえたけどね
　　　　　　　もう大丈夫だ。心配してくれてありがとう

　　　　　　　君のおかげで、この一週間で分かったことがある。

　　　　　　　誰が何と言おうと、僕は書き続けるしかないということだ
　　　　　　　例え、誰にも僕の言葉が届かなくても、だ

　　　　　　　僕はこのために生きている
　　　　　　　僕の生きる証はこれしかない
　　　　　　　そのことに気付いた。

　　　　　　　魂を削って自分の等身大の言葉を、その時その時吐きだしていけばいい
　　　　　　　誰にも遠慮することはいらない　そうだよな？


　　　　　　　もし誰にも僕の言葉が届かず
　　　　　　　僕の伝えたいことが伝わらないうちに命が尽きるとしたら
　　　　　　　それが僕の運命だろう。
　　　　　　　僕にとって生きるということは
　　　　　　　きっとそういうことだろう

　　　　　　　君の言葉が今ようやく僕の心に届いた。
　　　　　　　ありがとうな　たくさんたくさんいろんなものをくれて
　　　　　　　ようやく胸を張って生きていけるよ

　　　　　　　最後にいっぱい話をしたね
　
　　　　　　　でも、もし、これが最後になると分かっていたら
　　　　　　　君があと２時間でこの世を去ると分かっていたら
　　　　　　　どんなことをしてでも今すぐ君に会いにいっただろうな

　　　　　　　そして神様をぶん殴ってでも、
　　　　　　　君が天国に連れていかれるのを止めたと思う

　　　　　　　君の優しい声が、まだ耳の中に残っている
　　　　　　　リアルに聞こえるんだよ。
　　　　　　　だから、告別式には行かなかった
　　　　　　　ここで待っていれば、
　　　　　　　また君がひょっこり顔を出しそうな気がしたからだ
　　　　　　　そんなわけないと分かっていても、だ。

　　　　　　　かっこわるいけど、告別式の時間の間、
　　　　　　　僕は原稿を書く手を止めて
　　　　　　　この場所で、ずっと一人で泣いていた

　　　　　　　会いに行くよりも、ここで仕事をしている方が
　　　　　　　君も喜んでくれると思ったからだ。
　　　　　　　でも、やっぱり後悔したよ

　　　　　　　君が眠る場所を教えてもらった。
　　　　　　　少し落ち着いたら会いに行くよ
　　　　　　　もう少しすると、冷やで飲むとうまい日本酒が手に入る

　　　　　　　その時は、葉桜でも眺めながら、ゆっくり二人で話しながら飲もう
　　　　　　　だから、さよならは言わない

　　　　　　　それから、いっぱいいっぱいありがとう

　　　　　　　ごめんな。僕はいつも君にタイミング良く
　　　　　　　ありがとうって言ってあげられなかった。

　　　　　　　それだけが心の底に引っかかってるよ


　　　　　　　ごめんな

　　　　　　　もし君と同じくらい心を注げる人に出会ったら

　　　　　　　こんな悲しいミスは二度としないようにするよ