近所のコンビニで買った３０００円の花火セット
一番高くて豪勢なやつ
夏の旅行の時、二人だけで花火大会をするつもりだった
でも、花火の出番がやってきたのは９月最初の日曜日
お互いになんとなく忙しくなって
旅行は計画のまま、夏は終わってしまった
「せっかくだからさあ、花火、今日全部やっちゃおうよ」
ビールを飲んでる途中で僕がそう言いだしたのは
君が新しいワンピースを着てるのに気付いたから
夏の旅行の買い物に出かけた時、君がその服を買ったのを
覚えていたから
少し湿った空気の中で光る花火
時間が経つにつれて僕たちの間は笑顔であふれて
小さなわだかまりは花火と一緒に燃えて無くなった
最後に残った線香花火
ぷるぷる震える赤い火の玉が落ちると
僕らは突然、暗闇の中に放り出された
「来年の夏は絶対どこかに行こうね」
真っ暗な中で抱き合った後、僕がそうささやくと
君は何も言わなかった。
新しいワンピースに混じる君の涙の匂い
何も言わないのに、君のイエスの気持ちが
痛いくらい僕の中に飛び込んできた
